練馬の保育園民営化裁判追っかけ隊

練馬区立光が丘第八保育園の委託化をめぐって提起された、住民訴訟の記録です。練馬区のやり方は、理不尽にもほどがある!

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年度途中の「9月委託」方針発表

平成17年2月10日、志村区長は練馬区議会第1回定例会の所信表明演説で、光が丘第八保育園(光八)の委託時期を、当初の4月から9月に延期することを発表しました。

光八保護者は、事前に知らされていませんでした。

後になって調べてみると、年度途中の委託という事例は全国でも例がないこと、多くの事業者が「年度途中は困難」との認識であること、練馬区は子どもたちへ与える影響などについて、全く調査していないことがわかってきました。

以下に詳述します。
事実関係

平成16年12月3日に予定されていた事業者の募集開始が延期され、当初のスケジュールにもとづく委託化は、事実上不可能となりました。

平成17年2月5日、練馬区立光が丘第八保育園民間委託化対策協議会(以下「対策協議会」)の第1回が開かれ、保護者側代表は変更後のスケジュールを早期に提示するよう、区側に求めました。区側は、2月10日までに協議会に提示する旨を約束しました。

同年2月10日、志村区長は当初スケジュールを、以下の通り変更する旨を公表しました。練馬区議会第一回定例会の冒頭、所信表明演説の中に盛り込むという方法を採りました。

<新スケジュール>
4月当初 事業者募集のためのプロポーザル公募を実施
5月初旬 委託先の事業者を決定
6月~ 引継ぎのための準備委託を開始
9月~ 全面的な委託を実施

新スケジュールの中身は、光八保護者に事前に知らされておらず、保護者代表は即日、志村区長宛抗議文を出しました。

同年3月11日、原告・笠本による「年度途中の委託が園児たちに与える影響について調査、分析した資料」を求める情報公開請求に対し、被告は「不存在により非公開」という処分を下しました。

同年3月、区内他園の保護者有志による電話アンケートで、「9月からの委託に問題なし」と回答したのは、14社中2社のみで、そのうちの1社がピジョン株式会社でした。

同年5月17日、練馬区立光が丘第八保育園運営業務委託事業者選定委員会(以下「選定委員会」)の第1回会合で、事務局を務める保育課職員が9月実施の前例について問われた際、「隣接区で検討した例はあるが、23区内では実施された前例はない」旨を返答しました。

論証

以下に述べる通り、「9月に全面的に委託」という時期設定そのものが、著しく合理性を欠く違法なものといわざるを得ません。

既存園の運営主体を年度途中で変更した場合、少なくとも次の困難が予想されます。

(a)職員の新規採用が困難
既存園を受託する事業者は、自園から受託園へ異動する職員の補充と、受託園で必要人数の新規採用をしなければなりません。光八を受託する場合、園長を含む保育士を20数名、その他調理職員や栄養士、用務等を含めると、30名程度の新規採用を、短期間で行う必要に迫られます。
また、ただ採用さえすればよいというものではありません。それぞれの事業者はそれぞれの保育観を有し、また子育て支援に対する考え方、子どもの発育についての捉え方等にも個性があります。自社の保育方針に合致しそうな優秀な人材を採用しようとするのが通常です。
ところが年度途中の9月からの委託化に対応しようとすると、この時点ではすでに多くの人材は他事業者に採用が決定していたり、実際に仕事を始めていたりすることが当然に予想されます。
事実、9月委託に伴う採用活動の難しさを、一次選定で訴えた事業者が存在しました。
また、光八委託のために、公募直後から練馬区内で保育士の求人広告を打った応募事業者が実在しました。
練馬区が定めたスケジュールは、受託が決まるかどうか判らない段階で、職員を大量採用させるという大きなリスクを事業者に負わせなければ、達成不可能なものでした。

(b)年度途中の職員異動は困難
受託した事業者は、自身が運営している保育園から、現場で保育に当たっている職員を相当数、受託園に異動する必要に迫られます。受託先でのコア・メンバーとなるためです。新規採用者はそのスキル、キャリアにおいて千差万別で、保育についての考え方も各人各様であるのが通常です。そのため、事業者の保育を身につけた職員複数名が現場の核とならないと、統一した保育理念・保育方針のもとで、安定した保育が提供できず、考え方の衝突などから現場が混乱する恐れがあるからです。
一方、職員を送り出す園は、通常一年度単位で保育計画を立て、それに従って職員を配置しています。年度途中での受託の場合、その職員が計画半ばで異動するのですから、園としても人員補充はもちろん、補充された職員の力量等に合わせて当初計画を修正するなどの対応を余儀なくされることになります。病気療養や育児休暇等の、職員個々人の事情による欠員とは異なり、全職員の中の大きな割合の人数を異動させることになるので、現場への影響も甚大です。年度途中での異動という事情を考えれば、その負担は計り知れません。自園の子どもたちにも影響が及ぶ危険性があります。それだけのリスクを事業者は背負うことになるのです。

(c)園運営の混乱の危険性
前述の通り、保育園運営は年度計画を立てて行われるのが通常です。この年度計画には、入園・卒園に関連する行事や運動会などの年間行事とその準備計画はもちろんのこと、園児の年齢ごとの発育や園児個々の発育段階に合わせた保育目標の設定なども含まれます。
そこで、年度途中の委託を遂行しようとすると、それまで実施されてきた年度計画を受託事業者が引き継ぐのか、あるいは事業者の個性に合わせたものに変更するのかが問題になります。
前者の場合、一定の個性を持った事業者が、自分たちと異なる保育観・保育方針にもとづいて定められた計画に沿って保育を行うことになります。事業者に相応の意識改革を強いることになり、現場の保育士たちを当惑させる要因に、ひいては保育現場を混乱させる要因になる危険性をはらみます。
後者の場合、8月までとは異なる保育方針にもとづく計画により、保育が行われることになります。園児たちにとっては、4月から一定の園生活に慣れてきた頃に、生活習慣がガラリと変わることになります。これは、大人の事情を理解できない園児たちにとって、大きな当惑を招き、心理的負担を与える危険性があります。
また、保育方針や計画の変更は、事業者内だけで完結する問題ではありません。保護者たちも今までとは異なるものを理解し、受け入れなければなりません。保護者は大切なわが子を園に預けているのですから、園での子どもたちの生活については敏感です。「変わったのはなぜか、それは子どもたちにとっていいことなのか、いままでの園生活は何だったのか」という疑問が沸き、不安を覚えるのが通常です。事業者の考えを保護者の間に浸透させるには、両者の信頼関係を基礎とする徹底的なコミュニケーションが必要です。そしてそれには相応の時間が必要です。
※なお、「練馬区立光が丘第八保育園運営業務委託プロポーザル募集要領」(以下「募集要領」)には、練馬の場合は前者であることが明記されています。

(d)園児たちに与える影響の分析・検討
年度途中での委託化という事例は、全国的にも見られない極めて稀なケースです。少なくとも練馬区は、9月委託化を発表した時点で、前例を見い出してはいませんでした。つまり練馬区は、参考とすべき前例のない未知の事業を遂行しようとしていたことになります。
未知の事業に着手するからには、予想される問題点を事前に洗い出し、対応策を準備しておくべきです。特に保育園は、人生で最もデリケートな時期の子どもたちが現に生活している施設ですので、事前準備の重要性はひときわ高いと言えるでしょう。
この作業は、練馬区内部の職員のみで検討すれば足りる問題ではありません。保育や児童心理などに精通した複数の専門家らが検討チームを構成し、長期間かけて検討すべきテーマです。

まとめ

これらの困難を考慮すれば、光八の委託開始時期を平成18年4月からにする、あるいは平成19年4月からにするなどの判断を、志村区長はできたはずだし、またすべきでした。

にもかかわらず、志村区長は平成17年度内の委託化にこだわり続けました。予想される困難や保護者らの反対を押してまで年度途中での委託を強行するからには、それ相応の合理的理由が必要です。それは、園児たちへの影響や保育現場の混乱、事業者への不条理なリスク負担などを考慮しても、年度途中の委託化を正当化しうるだけの合理性を有していなければなりません。しかしながら光八委託の場合、そのような合理性は一片も見い出すことができません。

万一、そのような合理的理由が存在したとしても、計画の実施には上記の様々な困難に対処できるだけの事前調査、事前準備が不可欠ですし、またそれを実施すべきでした。

にもかかわらず、志村区長はそれらの準備行為を一切行わないまま、9月に全面委託する旨のスケジュールだけを、光八保護者との事前協議を経ることもなく、突然に発表したのです。

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笠本

Author:笠本
原告の一人でした。裁判の結果は僕たちが望むものではありませんでしたが、一方で、信じられないくらいたくさんのご支援・ご声援をいただきました。本当にありがとうございました。僕たちの足跡が、今後同様の問題に悩む保護者のみなさんに、少しでもお役に立てればと思い、このブログを記録として残します。

ぜひ読んでください!

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