練馬の保育園民営化裁判追っかけ隊

練馬区立光が丘第八保育園の委託化をめぐって提起された、住民訴訟の記録です。練馬区のやり方は、理不尽にもほどがある!

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当初計画の性急さ

練馬区がが委託化対象3園の保護者に対し、事業計画を通知したのは、平成16年8月17日付の「おしらせ」と題する一通の文書(下記)によってでした。とくに光が丘第八保育園(光八)は、他の2園と異なり、委託予定時期が「平成17年4月」と記載されてありました。保護者への通知からわずか7ヶ月あまりでの委託化というスケジュールです。

その間に、事業者を公募し、選定し、引き継がなければなりません。公募するにも選定するにも、それなりの条件を整えなければなりませんし、保育園を引き継ぐなんて、そんなにたやすいことではありません。

それをわずか7ヶ月でやってしまおうというのが、当初の計画でした。

----------------------------------------
平成16年8月17日
保護者のみなさまへ

おしらせ

 練馬区では、新行政改革プランにもとづき、「区立施設委託化・民営化実施計画(案)」を策定し、平成16年8月1日号の「ねりま区報」でお知らせしたところです。そのなかで、区立保育園については、平成18年度までに3園の運営を委託する予定で、準備を進めています。
 多様化する就労形態や生活スタイルの中、区立保育園に求めるサービスも延長保育の時間延長や休日保育の実施など多岐にわたるようになってきています。
 限られた財源の中、このような保護者のみなさまのご要望に的確にお応えするため、区では民間の力を活用して、より効率的な区立保育園の運営を行い、保育サービスの充実を積極的に進めてまいります。
 確保しなければならないサービス水準を維持することはもちろんのこと、通常の保育における保育料についても、他の区立保育園と変わりません。

<運営委託を予定している保育園>
○平成17年4月 光が丘第八保育園
○平成18年4月 向山保育園
○平成18年4月 石神井町つつじ保育園

※ 当該3保育園につきましては、保護者のみなさまに説明会を開催いたします。また、その他の保育園の保護者のみなさまにも別途、説明会を開催いたします。
 説明会日時につきましては、後日お知らせいたします。

児童青少年部保育課管理係
(電話番号)
----------------------------------------

以下に詳述します。
事実関係

(省略)

論証

この「7ヶ月」という期間設定は、既存園の運営を民間事業者に委託するという困難な事業を成功に導くには、あまりに短く、とても合理的なものとはいえません。

一般に、既設の公立園の運営業務を民間事業者に移管する場合、最低限、以下の事務を処理する必要があると思われます。

 (1)委託方針の設定に係る事務
 (2)事業者の公募に係る事務
 (3)事業者の選定に係る事務
 (4)引継ぎに必要な事務
 (5)これら一連の事務につき、保護者から理解と同意を得るために必要な事務

(1)委託方針の設定に係る事務

まず、公立保育園を民間事業者に委託するにあたり、その方針を検討する必要があります。それには、練馬区における子育て環境、保育環境の現状と将来展望について考察したり、公立保育園がこれまで担ってきた役割、今後担うべき役割、現在有する諸課題、民間活力を導入した場合の園児たちへの影響について分析したりといった、根本的な諸課題の検討が含まれます。

たとえば相模原市では、平成13年11月に「相模原市公立保育所あり方検討会報告書」を公表し、保育需要の増加や多様化、施設の老朽化など同市における状況や公立保育所の課題を分析し、進むべき方向を検証した上で、民間活力導入による効果や配慮すべき点などを提言しています。そのうえで、民営化方針の発表から完全移管まで2~3年の期間を確保し、ゆるやかに事業を進めています。

保育園は、0歳~6歳までの人生最初の6年間を過ごす場所です。この時期は同時に、園児たちの人格形成にとって最も重要な時期でもあります。既存園の委託化・民営化は、愛着のある保育士たちが短期間で一斉に入れ替わるなど、園児たちを取り巻く保育環境が激変する、極めてデリケートな配慮を要する難事業です。

ですから、既存園を委託化するのであれば、在園する園児たちへの影響を最小限に食い止めるよう、可能な限りの配慮が必要でです。

なのに練馬区は、これら諸課題の検討・検証を怠り、「区立施設委託化・民営化計画」(平成16年7月策定)において、平成18年度までに公立園3園を委託化する旨のみを公表し、また、それのみを根拠に光八を含む3園の委託化を強引に進めようとしました。

(2)事業者の公募に係る事務

事業者を募集するには、応募の条件を定める必要があります。本来なら、前述の通り園児たちへの影響を最大限に考慮し、条件を設定すべきだったのですが、今回の委託化にはそれが全くありませんでした。

委託化を成功させるためには、それにふさわしい実力と実績を持った事業者に応募してもらうことが不可欠です。練馬区立各園の保育水準は、他の自治体と比較しても高い位置にあると一般に評価されていて、練馬区自身がそれを認める発言を、当該園保護者向け説明会などの場で繰り返しています。

委託化を「成功」と呼ぶためには、光八がこれまで培ってきた高い保育水準を維持しながら、なおかつ既存の保育事業をトラブルなく引き継ぎ、移管後も安定的に良質な保育を提供できていなくてはならないはずです。

それを実践するには、受託する事業者に高度な実力と経験が求められます。

そのような事業者が応募しやすい条件・環境を整備するのに必要なすべての事務が、ここにいう「公募に関する事務」です。

それには、事業者が応募するのに必要な期間を十分に確保することも含まれます。民間事業者として保育事業の主力を担う社会福祉法人の場合、公募の情報を得てから理事会に諮り、議論を重ねて最終的に応募の意思を決定するまでに2ヶ月程度を要すると、一般に言われています。
練馬区が定めたスケジュールには、これらの事情に対する配慮が一切欠落していました。

(3)事業者の選定に係る事務

適切な事業者が、適切に選定されるために必要なすべての事務が、ここでいう「選定に係る事務」です。

練馬区の場合、書面審査、園長候補者のヒアリング、事業者が実際に運営している保育園の現地調査を踏まえて、選定にあたる委員たちの議論を経て決定されるというプロセスをとりました。

保育園は、保護者が就労している時間帯に、単に子どもを預かればよいというものではありません。子どもたちの人格形成に重要な時期、一日の大半を過ごす場所ですから、子どもたちの健全な発育をしっかり支える機能が求められます。必然的に、現場の運営の主体となる保育士さんたちには、児童心理や発育に関する高度な専門性が必要となります。

たとえば乳児にミルクを与える際、単に飲ませればよい訳ではありません。その子の発育段階やその日の体調などに配慮しながら、適温・適量を守るのは当然ですよね。それに加えて、その子を抱きかかえ、目を見て優しく言葉をかけながら、授乳に集中できるよう配慮することも、保育士に必要とされる職能だといいます。ミルクを与えられながら、同時にたっぷりの愛情をも与えられることが、その子の健全な発育に貢献することになるからです。

子どもたちの発育をどう考えるのか、個別の対応をどうするか(たとえば、子ども同士でおもちゃの取り合いになったとき)などについては、民間の事業者では個性が存在しますし、また優劣も存在します。

「選定に係る事務」とは、事業者が保育というものをどのように捉え、それをどのように実践しているかを見抜いた上で、光八の運営業務を委ねるに足りるかどうかを判断する作業のことなのです。

それゆえ、選定する側としては、保育という営みの何たるかを理解し、その専門性に通暁した人物が、全人格をもって慎重に行わねば、その目的を達することができません。

(4)引継ぎに必要な事務

既存園の業務を引き継ぐには、その園の年間保育方針を把握し、運動会など年間行事を受け継ぐといったことを連想しますが、実はそれだけでは足りません。園児たち一人ひとりの状況を、新しく受け持つ園長はじめ保育士たちが確実に把握することが、引継ぎの最重要部分です。

預かるのは、この世に生を受けて1年未満~6年くらいの不安定でデリケートな時期の子どもたちです。またこの時期の生育の速度は、一生のうちで最も早いです。なおかつ、個々の子どもには個々の性格があります。アレルギーの有無も把握しておかねばなりません。障害を持つ児童がいたならば、その障害の態様や程度を把握しておく必要もあります。

光八の定員は125名ですが、これら個別の事情を125名分、園長はじめ保育士一人ひとりが把握し、対応できるように準備するのが、引継ぎの要諦なのです。これを怠ると、重大な事故に繋がりかねないからです。

たとえばその子が卵アレルギーを持っていることを保育士が知らずに、卵を与えてしまったというような事故が起こり得るし、他の自治体では現実に起こっているといいます。

練馬区が事業者に許した引継ぎ作業の期間は、3ヶ月でした。

(5)これら一連の事務につき、保護者から理解と同意を得るために必要な事務

既存園の委託化で最も影響を受けるのは、当該園児たちとその保護者です。とくに愛するわが子を園に預けて仕事をする保護者たちにとっては、これまで何ら問題なく安定した保育を提供してきた環境が激変することに対する不安は、深刻なものです。

練馬区は、(1)~(4)で述べた困難を押してまで既存園を委託化する理由について、納得のできる説明をする責務があるはずです。さらに、委託化に伴って考えられる影響やその対処法について、先行する他の自治体の事例を分析したり、保育に通じた専門家に見解を求めたりしながら、委託化に要する期間や手法を慎重に選択したうえでなければ、保護者からの理解が得られる説明はできないはずです。

光八保護者を対象にした説明会は、3回開かれました。練馬区は「光八の保育水準は下げない」と何度も繰り返したのですが、結局その根拠を示しませんでした。

※応募事業者の負担

受託する事業者から見れば、選定の結果受託が決まってから実際に引継ぎに入るまでの間に、職員の手配を整えておかねばなりません。受託園に異動する職員を選定し、その抜けた穴を補充するために保育士を新規採用しなければなりません。また受託園でも新規採用する必要が生じます。新規採用の職員には、園の保育方針や保育技能を身につけさせる研修を一定期間行うことも必要です。さらに、トラブルなく引き継ぐための計画を策定しなければなりません。引継ぎ期間中は、派遣された職員は、自園との掛け持ちになることが多く、その双方をこなしながら、受託園での一切の状況を把握する必要に迫られるのです。

以上述べてきたことを、わずか7ヶ月の間にやってしまおうというのが、練馬区が定めた当初の計画でした。

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笠本

Author:笠本
原告の一人でした。裁判の結果は僕たちが望むものではありませんでしたが、一方で、信じられないくらいたくさんのご支援・ご声援をいただきました。本当にありがとうございました。僕たちの足跡が、今後同様の問題に悩む保護者のみなさんに、少しでもお役に立てればと思い、このブログを記録として残します。

ぜひ読んでください!

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